前回の記事の続きです。
今回は、法律に関する部分で誤解されがちなことを書いていきます。
前回の記事はこちら↓
同性婚とパートナーシップ制度の混同
現在、多くの自治体でパートナーシップ制度が導入されています。
それに伴って、「日本でも同性婚ができる」と誤解している人も増えてきたような気がします。
法的な効力について
結婚をすると、様々な社会保障を得ることができます。
例えば、法定相続、遺族年金、配偶者控除、配偶者ビザなどです。
これらの手厚い保障を、婚姻届を出すだけで、殆どお金をかけずに手に入れることができます。
一方、パートナーシップ制度には法的な効力が一切ありません。
公営住宅の入居や病院での面会がしやすくなるなどの効果は期待できますが、
パートナーシップ制度は、あくまで、二人の関係性を「自治体が」認める制度です。
「国が」認めるわけではないのです。
さらに、自治体によって制度の内容や利用できる条件が違うため、誰でもどこでも利用できるわけでもありません。
日本の結婚制度について思うこと
両者にこれだけ差があるなかで、「同性でも結婚できるじゃん」という言葉を聞いてしまった日には、いろんな感情が込み上げてきます。
日本ではまだ平等な結婚は出来ません。
なんで出来ないのか、なんで国は出来るようにしてくれないのか、疑問で仕方ありません。
同性で結婚できるようになっても、幸せな人が増えるだけで、異性で結婚したい人の権利が奪われるわけではないのに。
同性婚についてはこちら↓
トランスジェンダーの性別変更について
性別変更の要件
「トランスジェンダーは性別変更できるんだから困らないでしょ?」と思っている人、
日本の法律で定められている性別変更の要件を知っていますか?
前提条件:「性同一性障害」の診断を受けていること
まず、前提条件として、病院で「性同一性障害」の診断を受けていることが必要です。
日本精神神経学会で定められているガイドラインに沿って診断を受けるなら、
数年間にわたり何度もカウンセリングに通う必要があります。しかも2人以上の医師の診断が必要です。
そして、診断をできる医師のいる病院は多くありません。基本的に都会にしか無いです。
病院が遠ければ、特に時間とお金がかかります。
要件①:成人していること
たとえ物心ついたころからずっと性自認に関して悩んで苦しんでいても、
成人してからでなければ性別変更ができません。
要件②:現に婚姻をしていないこと
要件③:現に未成年の子がいないこと
トランスジェンダーで、性別変更をしていない状態で結婚をする人も、子どもがいる人もいます。
周囲からの圧力で結婚せざるを得なかったり、情報がない時代でトランスジェンダーの概念を知らずに違和感を抱えながら結婚したり子どもを設けたり、というケースが考えられます。
そうした人たちは、性別変更を望んだとき、離婚をしたり、子どもが成人するまで待ったりしなければなりません。
要件④:生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
要件⑤:その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること
不妊状態になっていて、望む性別の性器っぽい形のものが体に付いていないと、
性別変更ができないということです。
つまり性別適合手術をしろということです。臓器の摘出や、形成手術をする必要があります。
「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」の要件については、
2023年10月に最高裁判所で違憲判決が出ました。
今後法律が改正されるかもしれません。
そして、その手術は一部の場合を除き、保険適用外です。数百万円かけて自費でやれということです。
上記をすべてクリアした上で、家庭裁判所で性別変更の手続きをして、やっと戸籍の性別を変更することができるのです。
性別変更する(できる)人ばかりではない
すべての人が性別変更を望むわけではない
そもそも、トランスジェンダーの人がみな性別変更を望むわけではありません。
同じカテゴライズのセクシュアリティでも、人それぞれ違う考えを持っているのは当たり前です。
戸籍の性別を変えたいと思う人もいれば、そう思わない人もいます。
性別変更をできる人ばかりではない
また、性別変更の要件が非常に厳しいため、したいと思ってもさまざまな理由で出来ない人もいます。
金銭的な負担
性別適合手術が保険適用になるのは、定められたいくつかの病院で手術を行う場合のみで、しかもホルモン治療をしていない場合に限られます。
ホルモン治療とは、トランスジェンダー男性であれば男性ホルモン、トランスジェンダー女性であれば女性ホルモンを定期的に投与するものです。
体毛が濃くなったり声が低くなったり、または体毛が薄くなったり乳腺が発達したりします。
トランスジェンダーの人は、望む性別で社会生活を送るために、手術よりも先にホルモン治療をすることが殆どです。
そのため、保険適用で性別適合手術を受けられるケースはかなり珍しいです。
保険適用外だと数百万円かかるため、金銭的な負担が非常に大きいです。
身体的な負担
性別適合手術は、金銭的な負担に加え、身体的にも大きな負担がかかります。
全身麻酔をして、臓器を取るなど色々するため、健康上の理由で手術を受けられない人もいます。
同性婚ができないことによる理由
日本では同性婚ができないため、
例えば戸籍上同性同士で一人がトランスジェンダーであるカップルは、
性別変更をしなければ結婚することができません。
また、現在結婚しているカップルで、一人が戸籍変更をしていないトランスジェンダーである場合は、
性別変更をするためには離婚をしないといけません。
日本の性別変更の要件について思うこと
性別変更はものすごく大変なのです。
ここまで大きな負担や犠牲を払わないと性別変更を出来ないなんて、さすがにおかしいと思います。
戸籍上は出生時の性別のままであっても、ホルモン治療によって、望む性別で社会生活を送っている人はたくさんいます。
せめて、性別変更の要件から手術を撤廃するとかはできないのでしょうか。
「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」の要件については、
2023年10月に最高裁判所で違憲判決が出ました。
今後法律が改正されるかもしれません。
性別変更に関する現状を知れば、
悩んでいるトランスジェンダーの人に軽々しく「性別変更できるからいいじゃん」とは言えないと思います。
まとめ
これまで3回にわたり、勘違いされやすいことを投稿してきましたが、ひとまずここで一区切りです。
無知によって人を傷つけてしまうことのないよう、
ここまで書いてきた内容をたくさんの人が知っておいてくれたらいいなと思っています。
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